白内障手術…手術前の悩み 近くを見るべきか遠くを見るべきか

本日、9月20日は月に一度の白内障相談会の日でした。

「若いころは、何でも良く見えたんだけどな」

「視力2.0だったんだ」

「それが、40代になったとたん、近くが見えにくくなりだして・・・」

「老眼鏡ほど面倒くさいものは無いね。いちいち掛け外しが嫌でしょ」

「マスクのせいでレンズが曇って、遠近両用の眼鏡が見えにくい」

「近視の人は老眼にならないって聞いたのに」

沢山の方がおっしゃる台詞です。

そう・・・この悩み。この大人の悩みを感じているのは、独りではありません。

眼科で働くようになって幾年月。理解できるようになったのは、

様々な眼疾患や検査手法などの理論的・臨床的な知識。

身についたのは、各種の検査技術と贅肉。

そして、理解以上に実感できるようになったのが

老眼(老視)

老視(ろうし)は、目の障害の一つ。老眼(ろうがん)とも呼ばれるが、老視が正式名称。加齢により水晶体の弾性が失われて調節力が弱まり、近くのものに焦点を合わせることが遅くなったり、できなくなってくる。40代から60代初めに自覚されることが多いが、実際には20歳前後から調節力の減少は始まっており、日常生活で字を読む時の距離である30cm前後が見えにくくなるのが、この辺の年齢であるといえる。しかしこのような症状を自覚する年齢は個人差があり一概には言えないが、一般には40歳前後、早い人では30歳代半ばあたり、遅い人でも50歳代から60歳あたりまでに、自覚症状を訴えることがほとんどである。 Wikipediaより抜粋

要するに、大人の階段を上っていくと必ず出会う眼の変化の一つ・・・です。

Wikipediaの説明にもあるように、老視(老眼)は加齢性の調節障害というもので、

ピントを合わせる力=調節力 と言います。

この調節力は、14歳ぐらいをピークにだんだんと坂道を下っていきます。

(はっきり書くと、【減少していきます。】)

40歳前後で、調節力の低下を自覚しだします。

(はっきり書くと【手元の小さい文字が見えにくい、離すと見える、離さなきゃ見えない、眼鏡をはずせば見える、眼鏡をはずさなきゃ見えない…という自覚】です)

これが老眼と呼ばれる現象です。

そして60歳頃にこれ以上下がりようがないぐらい下がって、止まります。

(はっきり書くと、【調節力はゼロになって、これ以降、減少しようがないところまできます】)

老眼は、治せません。

その理由は、若返らないからです。

治せませんが、日常生活に不自由がない程度に工夫する事で対応します。

例えば、メガネで工夫する方法

例えば、コンタクトレンズで工夫する方法

例えば、白内障の症状があれば・・・

眼内レンズで工夫する方法

があります。

白内障の手術時に、基本的には人工眼内レンズを挿入しますが、

人工眼内レンズには

★単焦点眼内レンズ(保険診療対象)

★多焦点眼内レンズ(当院では選定療養対象)

の2種類があります。

白内障以外に眼に疾患が無い場合において、

単焦点眼内レンズを選んだ時のメリット(嬉しい点)は、

1)保険診療対象⇒自己負担は少ない

2)遠方か近方で選択した距離を見るにあたっては、割としっかり見える

上記の2点です。

デメリット(残念な点)は、

1)人生のお供に必ずと言っていいほど「眼鏡」が必要

上記の点です。

これ、どういう事だろう?と疑問に思われる方も少なくありません。

実は、単焦点眼内レンズは、その度数を自由に選択することができるのです。

選んだ度数によって、

眼鏡無しで遠方が見える、又は、近方が見える状態を生み出すことができるのです。

単焦点眼内レンズを挿入すると決めたときに、担当医と相談するのは、

「裸眼でどこが見えるのが良いか」という点です。

 

★理想として裸眼で遠方が見たい

⇒運転するのに眼鏡は邪魔・TVを見るのに眼鏡は邪魔・外出するのに眼鏡は邪魔・スポーツするのに眼鏡は邪魔

上記の場合は、単焦点眼内レンズの度数を遠方に合わせるという事になります。

なので、それ以外の距離を見る時はメガネが必要になります。

 

★理想として裸眼で近方が見たい

⇒お化粧するのに眼鏡は邪魔・読み書きするのに眼鏡は邪魔・手芸をするのに眼鏡は邪魔・マニキュア塗るのに眼鏡は邪魔

上記の場合は、単焦点眼内レンズの度数を近方に合わせるという事になります。

よって、それ以外の距離を見る時はメガネが必要になります。

 

★理想として裸眼で中間距離が見たい

⇒お料理するのに眼鏡は邪魔・パソコンするのに眼鏡は邪魔

上記の場合は、単焦点眼内レンズの度数を中間距離に合わせるという事になります。

という事は、それ以外の距離を見る時はメガネが必要になります。

 

さて、どこの距離を裸眼で見えるのが理想でしょうか?

それは、それぞれの人のライフスタイルによって異なります。

尚、この理想の見え方になるには、白内障以外に眼に疾患が無い事が条件となりますし、

乱視が軽度である事など、元々の眼の具合にもよって見え方は多少左右されます

帯に短し襷に長し・・・、確かに(否定はしません)。

さて、人生の一大事です。どうやって選んだらいいのでしょう。

選び方の一つとして、例えば

白内障術前の生活を変更しない方が慣れやすい・・・という事を考えれば、

元々近視の方は、眼鏡をかけて遠方を見ることに抵抗が少ない方が多いように思います。

実際に「眼鏡無しで近方が見えるような度数」(近視の状態を残す)を選ばれる方が多く、

術後の生活も、眼鏡をかけて車の運転やTVを鑑賞し、読み書きの際は眼鏡を外す

・・・という生活を選ばれます。

今まで「近くを見る時はメガネをはずす生活」から「近くを見る時にメガネを付ける」と

逆の行動を必要とする生活に慣れるのには、少々時間がかかることがあるようです。

 

というような感じで、今までの生活がどうだったのか・・・、

これからの生活をどうしたいのか・・・を、

当院では担当医がご本人と一緒に考えていく事にしています。

どうしたらいいのかわからない時は、ぜひ一度ご相談ください。

ORT385

※実際はいろいろな裏技を使う事もあります。いずれにせよその方の眼がどのような状態にあるかによって対応策は変わります。何はともあれ、白内障が気になる場合は眼医者さんへ。